2024年6月13日木曜日

天体望遠鏡用アイピースをスマスコで使う 2. 撮影


 ひとめ見て気になったこと……

それは歪みです。
歪み(歪曲収差)がひどいのです。

どれだけ歪んでいるか、近くの公園に歪みを見るのにちょうどいいオブジェがあったので、比較、確認してみました。


まずはVixen SSW14mmから。

強烈に歪みます。


次にNikon NAV-7SW。

それほど歪みはありません。

この歪みは中心から端にいくほど、また、視野が広くなるほど、倍率が低いほど大きくなります。
Nikon NAV-7SWは、Vixen SSW14mmより見掛け視界が狭いですし、倍率も高いので、その分歪みが抑えられています。
対してVixen SSW14mmはその逆で、視野が広く倍率も低いと、歪みの悪条件が揃っています。

まてよ、倍率が低い=広角ほど歪むということは、iPhoneのカメラの歪みも加味されているのか?
iPhonのカメラはどんどん広角化が進み、14 Proではついに24 mm(35mm版換算)になってしまいました。
もはや、日常的な撮影でも使いにくいほどの広角です。

(※以下、iPhoneの焦点距離に関しては35mm版換算の数値で記載します)

そこで、中古(しかもジャンク扱い)のiPhone 4Sを買ってきて比較してみることにしました。

iPhone 4Sのカメラは35mmです。

35mmといえど、歪みが出ます。
ですが、14 Pro Maxの24mmと比較すると、幾分かマシです。


このように、広視野アイピースでのスマスコは、アイピース自体の歪みに加えてiPhoneのカメラの歪みで、いっそう歪みがキツくなります。

とはいえ、撮影の対象が生物なら、それほど気になることは多くないと思います。
各アイピースで鳥を撮影してみました。

●Vixen SSW14mm
歪みがひどかったSSWですが、描写は鮮やかでキレがあります。これは意外に気に入りました。

ズームは14 Pro Maxの場合1.1xほどでケラレが消えますが、やはり周辺部の歪みが気になって1.2xにして撮っていました。


● Nikon NAV-7SW
う〜ん、もっさりしています。
暗めで色もくすんでいて、輪郭もパッとしません。60倍クラスのアイピースらしい印象です。

対物レンズ有効径65mmのこのスコープでは60倍は厳しいようです。80mmクラスのスコープなら、また違うかもしれません。


お店で他にも天体望遠鏡用広視野アイピースを試させてもらいましたが、やはり歪みがありました。
視野が広ければ広いほど、また倍率が低いほど周辺部の歪みが大きくなるのは仕方がないとのことです。
それに比べると、PROMINAR(コーワ)のTE-80XW(https://amzn.to/3RpoGm8)は、よく歪みを抑えられていると思います。

天体望遠鏡と地上望遠鏡(フィールドスコープ)では、アイピースに求められる役割が違うという話は、お店の人やコーワの人からも聞きました。


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こうして広視野アイピースを試してみて、iPhoneの48MPでの焦点距離が35mm程度にならない限り、アイピースは極端な広視野よりも、TE-11WZⅡくらいの視野でiPhoneを少しズームして使うのがいちばんバランスがいいのでは?と考えるようになりました。
iPhoneの48MPというのは“解像度の余裕”と捉えて。

では、この先iPhoneのカメラが48MPで焦点距離35mmとかになる可能性はあるのでしょうか?
イメージセンサーが大きくなることはあっても小さくなることはないでしょう。一方で筐体の厚みも薄くなることはあっても極端に厚くなることはないでしょう。カメラ部分の盛り上がりでごまかすにも限界があります。
もしかしたら、テトラプリズムで技術的に可能になるかもしれませんが、ユーザーが28mm以下の広角に慣れていることもあり、35mmに上げるのは受け入れられない気がします。
そんなことから、これからもiPhoneのメインカメラは24〜26mm、せいぜい28mmあたりを維持することになると考えています。


最後に、今回使用したスコープ、PENTAX PF-65EDⅡについてですが、驚くようなキレイさはないですが、けっして悪くもない、平均的な65mmのEDレンズといった印象です。
ですが、専用のアイピースを使っていないこともあり、本当の実力は判断しかねます。

天体望遠鏡用アイピースをスマスコで使う 1. 機材

近年、iPhoneのカメラも解像度が上がり、これまでの12MPから48MPへとなりました。

しかし、スマスコで使う場合、ケラレをなくすために1.2倍〜1.4倍とズームをしなくてはならず、せっかくの48MPも31MPや24MPと解像度が落ちてしまいます。
48MPをフルに生かすためにはケラレの出ない広い視野を持ったアイピース、広視野アイピースが必要です。

この広視野アイピースの“広視野”とは、規格としての基準はないようですが、個人的には見掛け視界が80°、最低でも70°以上は欲しいところ。メーカーの説明を見ても、だいたいそんなところです。

フィールドスコープ用アイピースで、これほどの広い視野を持ったアイピースは、PROMINAR(コーワ)のTE-80XW(https://amzn.to/3RpoGm8)くらいでしょうか。

TE-80XWは、見掛け視界80°という広視野なアイピースです。
実際には、iPhone 14 Proの場合1.1xほどズームしなければなりませんが、他のアイピースより圧倒的にケラレが少ないです。

しかし高い!10万円ほどします。いつかは買ってもいいと思うのですが、とりあえず広視野アイピースがどんなものか試してみたいと思い調べてみると、天体望遠鏡用のアイピースにいくつか種類があることが分かりました。

フィールドスコープのアイピースはメーカーごとに取り付け方が違うので互換性はありません。また、種類も少なく、スコープ一機種につきアイピースは2、3種程度です。
しかし、天体望遠鏡用のアイピースは規格が決まっていて、同一サイズのものならメーカー問わず取り付けられるので選択肢が豊富です。

とはいえ、天体望遠鏡用のアイピースをフィールドスコープで使えるのか?
実は、天体望遠鏡用アイピースの規格を取り入れているフィールドスコープがあるのです。

PENTAXです。

対物レンズ有効径65mmのPF-65EDⅡ、80mmのPF-80ED、85mmのPF-85EDAの3種すべてで差込口が31.7mmの天体望遠鏡用のアイピースが使えます。

そして、そのPF-65EDⅡ(https://amzn.to/45uKeUbが中古カメラ屋さんに置いてありました。

はい、買いましたとも。

外観はキレイとは言えませんが、レンズは問題なし。テスト用としては十分です。

テストベッドが手に入ったので、天体望遠鏡用のアイピースも揃えました。
Vixen SSW14mm(https://amzn.to/45uKKBB)とNikon NAV-7SW(https://amzn.to/3yT7wXy)です。

2つとも3万円ほどでした。
「でした」と過去形にしたのは、VixenのSSWシリーズは生産終了で、Nikon NAV-7SWはセール価格だったからです。
(注:PENTAXの中古スコープと2つのアイピースと合わせればTE-80XWが買えるのでは?とか考えないように)

この2つのアイピースの見掛け視界は、

Vixen SSW14mm:83°
Nikon NAV-7SW:72°

と、Vixen SSWはTE-80XW以上の広視野です。
ちなみに、PROMINAR(コーワ)の代表的なアイピースTE-11WZⅡの見掛け視界は60倍で69.2°です。これでも十分、広いほうです。


天体望遠鏡のアイピースは、倍率ではなく焦点距離で表されます。
Vixen SSW14mmなら14mm、Nikon NAV-7SWなら7mmといった具合です。
倍率で表すフィールドスコープのアイピースと比較しにくいのですが、計算により焦点距離から倍率を求められます。

対物レンズの焦点距離÷接眼レンズ(アイピース)の焦点距離=倍率

ですから、アイピースの数字(焦点距離)が小さいほど倍率が高くなることになります。

計算式に“対物レンズの焦点距離”とありますが、普通、フィールドスコープの仕様に焦点距離の記載はありません。
しかし、天体望遠鏡と同じ規格のアイピースを使うことからか、PENTAXのスコープには本体に焦点距離が記されています。このPF-65EDⅡでは390mmとなっています。

計算すると、
Vixen SSW14mmは、27.857142857142857で約28倍。大別すると30倍クラスのアイピースとなります。
Nikon NAV-7SWは、55.714285714285714で約56倍。こちらは60倍クラスのアイピースとなります。


スコープとアイピースは揃ったけど、iPhoneとの接続はどうするか?
Nikonの天体望遠鏡用アイピースNAV-SWシリーズには別売りで“デジスコ用”のアタッチメント『テレスコープアタッチメントTSA-1』(https://amzn.to/4bXEgxA)という製品があります。
アイピースの目当てゴムがねじ式になっているので、外して交換します。

このTSA-1の直径がコーワのアイピースより若干小さい程度なので、3Dプリントでつくったコーワ用のアイピースホルダーがはまりました。

ただ、そのままではアウターリングを回しても緩くて固定できません。
しかし!このアイピースホルダーの試作で、寸法が少し小さかったためキツくて締め込むことができなかったアウターリングの失敗作があるのですが、これで締め込むとしっかりと固定できました!
失敗も無駄にはならないのです!(強がり)

Vixen SSW14mmにも、Nikon TSA-1を強引に取り付けてiPhoneを接続します。

iPhoneを接続できたので、試しに部屋から外を見てみたところ、ひとめ見て、ものすごく気になることがありました。

・・・つづく