2026年8月23日日曜日

Nikonでスマスコ -3 MONARCHフィールドスコープ用のパーツ


過去の記事『CP+ 2019レポート』にも少し書きましたが、2019年のCP+でのこと、Nikonのブースに、このMONARCHフィールドスコープが展示されていました。

当時、Kowaはスマスコを積極的に推し進めていた一方、Nikonはデジスコーピング(Nikonにおけるデジスコの呼称)止まりでスマスコに手を出す気配はありませんでした。
そこで、Nikonのスタッフに「ニコンはスマスコやらないんですか?」と聞いてみたところ、返ってきた答えは「やりたいんですけどねぇ……画質が保証できないですし……」とのことでした。
Nikonは自社でカメラを製造販売しているから、やりたくてもできないんだろうな、やっぱりKowaだな!と当時は思いました。

しかし現在、かつてKowaが思い描いていたであろうデジスコがスマスコに置き換わるようなことはなく、デジスコユーザーは皆ミラーレス一眼へと移行しました。
当のKowaもスマホでの撮影はスコープの使い方の一つといったスタンスになり、以前のように本気で撮影するためのオプションパーツ等の製品展開はしていません。(“本国”では)
それを思うと、Nikonはスマスコに手を出さなくて良かったのでは?とさえ現在は思えます。

また、「画質が保証できない」旨の発言も、今では「そうなんだろうなぁ」と思えます。
自社でカメラを製造しているから、アダプター類もそれに最適化していたでしょうし、やはりカメラメーカーのこだわりがあったのでしょう。
現在こうしてMONARCHを覗いていると、そう思えてきました。


イントロダクションを長々と書いてしまったので、サッと3Dプリントでつくったパーツの説明を。

照準器マウント

付ける場所がない!どこに付けよう?もう、ここに付けるしかない!ということで脚を包み込むようにマウントをつくりました。

上部にはアクセサリーシューを設置。重心に近いためiPhoneなど重いものを取り付けても雲台のバランスに影響しにくいです。

照準器はノーベルアームズのABSOLUTE PRO。
コンパクトなボディに広くてクリアーなスクリーンで大型のスコープから単眼鏡での撮影まで対応できて、もうこれ一択。



アイピース - スマートフォンアダプター

いちばんキモとなるMONARCHとiPhoneを接続するパーツ。
MONARCHの描写力を最大限に引き出すには、しっかりとした接続と調整が不可欠です。
CP+での「画質が保証できないですし……」の言葉がずっと頭の中に残っていて、下手なものはつくれないなと、何度も何度もつくり直しました。

パーツ構成と簡単な説明。
レンズ間クリアランスを調整し、4箇所のネジで固定。

MONARCHの直視型は鏡筒が回転できないので、アダプターに回転機構を付けて縦構図でも撮影できるようにしました(反時計回り90°のみ)。

MEP-38用とMEP-30-60W用では形状が違います。

MONARCHの他、Nikonのデジスコーピング対応アイピースで使えます。


※これらの3Dプリントのパーツは、おそらく需要がないので公開していません。要望があればDMM.makeクリエイターズマーケットに公開し、この下に追記で説明を加えていきます。



Nikonでスマスコ -2 MONARCHフィールドスコープで撮影

 MONARCHとiPhoneの接続や照準器マウントなど、3Dプリントでつくったパーツの説明は次回にして、先に撮影です。

※MEP-38とMEP-30-60W 両方とも、iPhone 16 Pro Maxではメインカメラ1.5x(35mm)、iPhone 16ではおおよそ1.2xで撮影しています。

まずは何をおいてもこれ。
ズームアイピース30-60Wの60倍で撮影した青空です。いやもう、これだけで十分、買ってよかったと思えます。

何を言ってるんだって?
過去の記事『接眼レンズとiPhoneの距離を調節する』で書きましたが、KowaのズームアイピースTE-11WZでは、どんなに調節してもムラがあって色もくすんだような青空になってしまっていました。
774では飛行機を撮るのに60倍なんて必要ないし高倍率のズームアイピースだからこんなものだろうと思っていたので、MONARCHのこの青空はとても嬉しくなりました。

30-60Wと38Wで同じような構図になった飛行機の写真を並べてみました。

どちらも同じように見えます。それが凄いんです。
Kowaの11WZでは、飛行機をはじめ人工物を撮ると固定倍率のアイピースよりディテールが落ちるのがはっきりとわかります。
それが、MONARCHではズームアイピースでも固定倍率の38Wと遜色ないくらいに撮れます。(それでも38Wのほうが一段上ですが)
前回書いたKowaのアイピースで許容できない点というのはこのことで、KowaがPROMINARブランドとして新しいスコープを発売しても、主力となるアイピースが11WZのままでは無理してまで買おうという気にはなれませんでした。
(フォローしておきますが、鳥の観察・撮影では、視野が広くて現在でも十分な性能を持っていると思います)

●MEP-38とMEP-30-60W両アイピースに共通する事項
・iPhoneのカメラの広角度と相まって歪曲収差はキツめです。

・ピント調節は前項で書いた通りで、キレがいい分だけiPhoneのオートフォーカスも合わせやすいように感じられます。ただし、胴体にピントを合わせてきます。そして、撮影者側もそれで鳥全体にピントが合ったように見えてしまいます。そして、撮影後に写真を拡大してみると、目にピントが合ってなかったことが多々ありました。

・薄暗くても、しっかりとディテールが出ます。

・iPhone 16 Proのテトラプリズム5x望遠カメラですが、さすがに輪郭もぼやけてしまいノイズも目立つので、積極的に使おうという気にはなれません。

遠距離

近距離


●MEP-30-60W
ズームは倍率が低くなるほどケラレが大きくなります。
iPhone 16 Pro Maxメインカメラ1.5xで撮影する場合、アイピースに目盛り表示がないので正確な倍率はわかりませんが、だいたい30〜45倍くらいはケラレが出ます。

30倍は非常に明るくバキバキにシャープですがケラレが大きくなります。

眼視では60倍とそれ以下の倍率で明るさの差があったことから、撮影でも60倍まで上げることはほとんどなく、50倍前後で撮影することが多いです。
Kowaの774では、ほとんど60倍で鳥を大きく撮ろうとしていましたが、MONARCHでは、できるだけ倍率低めで背景も入れるようになり、撮影が変わりました。



iPhoneメインカメラの2xも以前ほど使わなくなりました。

先述の空、鳥でも有効な場面はあります。

11WZでは飛行機なんて撮る気にもならなかったけど、MONARCHでは撮れる!


●MEP-38W
38倍の固定倍率です。
いくらズームアイピースのMEP-30-60Wがいいとはいえ、やはり固定倍率のアイピースにはかないません。
明るさ、シャープさ、キレは、こちらがさらに一段上です。

先ほど「倍率低めで背景を入れようとするようになり」と書きましたが、それなら38Wでいいかというと、それでもある程度の大きさで撮りたいので、鳥を撮るには倍率不足を感じる場面が多いです。やはり鳥撮影では50倍、60倍くらいの倍率がほしくなります。
とはいえ、この38倍にも使い所はいろいろあって活躍しています。

774と同じく飛行機撮影とか

50倍では近すぎる場所とか

低倍率の機動性?

暗さにはズームアイピースより強いです。

こうして作例をいくつか載せましたが、このブログではHDR表示ができないので残念ながらMONARCHとiPhoneの組み合わせで撮影した本来の写真の姿ではありません。
iPhoneの写真をほぼそのまま表示できるMacBook Proの画面で見ると、撮影した時の光がそのまま閉じ込められているかのような臨場感があり、ついつい見入ってしまいます。

この写真もSDRとHDRではまったく違います。HDRでは、まさにこの瞬間の光が、さらに言えば空間が記録されているかのようです。

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スマスコには手を出さなかったNikonだけど、10年前のモデルだけど、このMONARCHは最新のiPhoneと相性がよく、ある意味、現代的なフィールドスコープなのでした。

時折り、撮影していて「MONARCH、えげつな」と思わずつぶやいしまいます。

Nikonでスマスコ -1 MONARCHフィールドスコープ82ED-S

かつて日本の2大スコープメーカーとしてKowaと双璧をなしていたNikon。

と、過去形にしてしまいましたが、Kowaはここ数年、PROMINARブランドとしてフィールドスコープ(スポテッドスコープ)の新機種を次々にリリースしている一方、Nikonはというと執筆時現在(2026年)でのラインナップは3機種で、そのうち実際の選択肢となるとMONARCHとED50の2機種になってしまいます。
この2機種、比較的新しいMONARCHでも2016年発売、ED50にいたっては2005年と20年以上前の発売です。
Nikonはデジスコの衰退と共にフィールドスコープのラインナップを縮小していったようにみえます。

そんな状況で、なぜ私はKowa(PROMINAR)でなくNikonのスコープを買ったのか。
いくつか理由があります。

まず第一に、新しいことをやってみたかった。
これまでずっとKowaのスコープを使ってきましたが、Kowa用の機材製作が一段落したところで、もうそろそろ違う景色を見てみたいと思うようになりました。
そこで、かねてから考えていた"2大メーカー"のもう片方のNikonです。

次に、Kowaのしがらみからの解放。
私が774で撮影をはじめた当初、Kowaはスマスコに注力していてスコープとiPhoneを接続するためのパーツが揃っていました。それからiPhoneが世代交代してKowaが対応しなくなっても自分であれこれ加工して使い続けてきましたが、現在は3Dプリントによって、ある程度自分の思い通りにパーツをつくれるようになり、Kowaのパーツに頼らなくてもよくなりました。

そのため、スマートフォンとの接続を想定していないNikonのスコープでも、どうにかなるだろうと思ったのです。

そして価格。
KowaがPROMINARブランドとして小型から大型まで新しくスコープを4機種そろえましたが、いちばん安いTSN-66でも24万円。しかもこれはアイピースなしの本体のみの価格です。これにアイピースも買うとなると、結局どの機種でも30万円以上の出費になります。(手のひらサイズの小さなTSN-55でさえも!)しかも量販店での販売はないので、ほとんど値引きは望めません。
ブランド構築、部材費の高騰など事情は理解できますが、770や880が20万円もかからず買えた時代を知る者としては、ちょっとためらわれる価格です。
それに対し、MONARCHは現在でも10万円台で買えます。
というか、私が774を買った頃より安い値段で本体とアイピース2本を買い揃えることができました。

もう一点、アイピース。
Kowa(PROMINAR)はスコープ本体が新しくなっても、主力となるズームアイピースTE-11WZ(MarkII)は2013年発売の製品と同様のものです。
TE-11WZは、よくできたアイピースです。鳥の観察・撮影で使っていて特に不満を感じることはないでしょう。
ですが、私には許容できない点もあるのですが、それは次回に書くことにします。


それでは、スコープ本体をみていきましょう。

ボン・キュッ・ボーン!なくびれのはっきりとしたグラマラスなボディ。

重さは本体のみで1650g。Kowa TSN-774と比べると300gほど重く、この差は明確に実感できます。

先端は引き出してレンズフードになるお馴染みの機構。

フィルターねじ径は86mm。

直視型には鏡筒の回転機構がありません。(傾斜型にはあります)
これは地味に不便です。
774では縦構図にしたり、カバンに収納するのにも便利でした。

対物レンズキャップ
774のレンズキャップはフィルター(プロレクター)を付けると使えませんでしたが、MONARCHは使えます。

マウントキャップ
なんだ、このプリングスの蓋は!
浅いのですぐ取れます。アイピースのキャップも外れやすいし、私の使っているNikonの小型双眼鏡のキャップも外れやすい。Nikon、レンズキャップは下手?

アイピースのケース
これはKowaと比べると圧倒的な勝利。
Kowaのケースは合皮で、17W、11WZともに表皮がボロボロに剥がれてきたので捨てました。


フォーカスリング
ピント調整は、鏡筒のフォーカスリングを回して行います。
海外ではバレルフォーカスとも言われているタイプです。
こんな大柄なフォーカスリングで繊細なピント調整ができるのか心配でしたが、まったく問題ありませんでした。

Kowaのデュアルフォーカスと比較して使い勝手はどうか?

MONARCHのフォーカスリングはKowaの粗動ノブと同じくらいの動きです。
私はKowaの粗動ノブでピントの微調整はやりたくありませんが、MONARCHのフォーカスリングはピントの微調整もやりやすいです。
それには、いくつか要因があるように思います。
まず、Nikonの説明にあるようにフォーカスリングの調整範囲が近距離と遠距離とで変化していること。
次に直径の違い。
KowaのフォーカスノブとMONARCHのフォーカスリングでは直径の違いが大きいので、例えば1度の角度を回すにしても直径が小さいとすぐに1度以上回ってしまいがちですが、直径が大きいと1度といった微妙な角度でも回す移動距離が長くなり、その分、微調整がやりやすくなります。

そして、もう1点はMONARCHのキレのいい描写です。
輪郭がシャープな分だけ、人間側もピントを把握しやすいですしiPhoneのオートフォーカスも合いやすいようにみえます。

一方で、微妙な、ごくわずかなピント調節はKowaの微動ノブのほうがやりやすいです。
ジンバル雲台でロックせずにピント調節をすると、MONARCHのフォーカスリングでは雲台が動いてしまいますが、Kowaの微動ノブでは動くことなくノブを回せます。

ピント調節は人によって操作の仕方や感覚が違うでしょうが、MONARCHもKowaも一長一短だと思います。
素早く大きく動かすならMONARCHのフォーカスリング、ごくわずかなピント調節はKowaのデュアルフォーカスノブ、といったところでしょうか。

(余談:Kowaのデュアルフォーカスノブ、はじめは戸惑う人も多いのでは?そして、なかなか慣れない。結局、微動ノブのみを使いがちになる)


アイピースは、この2本を買いました。
スコープへの取り付けはバヨネットです。
MEP-38W

MEP-30-60W

MEP-38W
38倍固定倍率のアイピース。ズームアイピースより一段と明るくてシャープです。
遠距離の観察が必要なく、森や林の中ならズームアイピースよりこちらのほうが楽です。
Nikonのデジスコーピングシステム対応。

見口ゴムはツイストアップできます。


MEP-30-60W
30倍〜60倍のズームアイピースです。

こちらも、見口ゴムはツイストアップできます。

また、見口ゴムは取り外すことができ、

付属のデジスコーピングシステム対応見口に交換できます。
こちらはツイストアップできません。

倍率が低いほど明るくなり、30倍側は明るいし視野も広く使いやすいです。
60倍では30倍に比べると、はっきりと暗くなるのがわかります。
倍率を変更するとフォーカスが変化するので、ピントを調節し直さなければなりません。
ズームの表記がLowとHighだけで倍率が書いてないのは不親切。
観察では30倍を中心に使って、必要があればズームするという使い方がいいかと。


眼視(観察)

はじめに捉えたのはジョウビタキのオスでした。
「なにこれHDRやん!」
電源もバックライトもないのにHDR表示されているかのよう。
明るくて、くっきりとシャープでキレのいいNikonの見え味。
頭部の羽の1本1本もシャープに解像します。
一方、色収差はKowaのほうがうまく抑えてるかな。

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MONARCHはHDR、KowaはSDR。
こう書くとNikonのほうが優れてるように受け取れますが、Kowaは言い方を変えるとナチュラルです。
人によっては、MONARCHのHDRっぽさが不自然に感じられるかもしれません。

私の感想としては、「鳥を見たい」というより「このスコープに写る鳥を見たい」と思わせる、そんなフィールドスコープです。

そして、このMONARCHの”HDR”は、最新のiPhoneと非常に相性がいいのです。