2021年4月17日土曜日

Kenko Sky Explorer スマートフォン用アダプター 〜その2. 撮影〜

 実際に撮影してみます。

このホルダー本来の写りを確認するため、iPhoneにケースをつけず「裸」の状態で取り付けて撮影してみました。
上の写真のように、ケラレと周辺減光の境が分からないくらい四隅が減光しています。
通常、このスコープではデジタルズームを1.2倍にすればケラレがなくなるのですが、1.3倍にしても周辺減光でケラレがなくなったかどうかも分かりません。
しかし、これ以上デジタルズームを上げたくないので、これで撮影してみます。





四隅の減光が気になりますが、思ったより悪くないと思いました。
ただ、本来の12 Pro Maxの写りではありません。
周辺減光に加え、スマートHDR 3の「くっきり感」がありません。
やはり、汎用アダプターはこんなものか……。


次は、iPhoneにケースをつけた状態で取り付けてみます。
あれ?
デジタルズームを1.2倍にすると、ケラレが消えたのがはっきりと分かります。
四隅を見ても、減光は見られません。



枝かぶりで申し訳ありませんが、背景もきれいに写っています。

写りだけなら、DA-10使用時と遜色ない感じです。

なぜ、ケースをつける、つけないで差が出たのか?
それは、ケースをつけることによって、アイピースとiPhoneのカメラとの距離がちょうど良くなったからです。
ちなみに、このケースはエレコムのハイブリッドケースで、背面の厚さは2mmです。

・ケースなし

・ケースあり
iPhoneのカメラとアイピースとの間に隙間が開いているので、場合によっては光が入り込んでしまいます。
黒いスポンジ材などを挟めば、簡単に対策できると思います。


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日本では、iPhoneの最新機種に対応したスマスコ用のアダプターは販売されていません。
そうなると、こういった汎用アダプターに頼るのが、いちばん手軽な手段となります。
今回試してみるまで、汎用アダプターは、取り付けの安定性に欠け、画質も劣るだろうと思っていましたが、画質に関しては十分きれいに撮れることが確認できました。
取り付けの安定性には欠けますが、移動しなければ、それほど問題になることもないでしょう。(三脚の脚を蹴らないように気はつけなければなりませんが)

スマスコを試してみたい人や、観察のついでにちょっと撮影したいといった人は使ってみてもいいと思います。

その際は、くれぐれもiPhoneの落下にはご注意を!





Kenko Sky Explorer スマートフォン用アダプター 〜その1. iPhone 12 Pro Maxで使うために〜



「Sky Explorer」というのは、ケンコーの天体望遠鏡シリーズの一つです。
その天体望遠鏡にスマートフォンを取り付けるためのアダプターなのですが、汎用性が高いので、さまざまな光学機器、スマートフォンに取り付けることができます。

そこで、このアダプターを使って、私の使っているフィールドスコープ Kowa TSN-774 に、iPhone 12 Pro Maxを取り付けてみました。


●iPhoneの固定

幅54〜97mm、厚さ13mmまでのスマートフォンに対応。

12 Pro Maxでもケースをつけた状態で取り付けることができます。


●レンズの位置合わせ

接眼レンズホルダーの穴をiPhoneのカメラのレンズに合わせて、ネジで固定します。
アダプターの穴と12 Pro Maxのレンズの大きさが同じくらいなので、位置合わせがしやすいです。

スマートフォンホルダー部にネジ穴が2つ開いているので、適応範囲が広がります。


●アイピース(接眼レンズ)への取り付け

接眼レンズホルダー部のいちばん外側が回転するようになっています。

このリングを回すと、内側の3本のツメが狭まったり広がったりします。

取り付けることのできるアイピースの外径は26〜52mm。

ところが!
TSN-774(880シリーズも同様)のアイピースの外径は55.3mm!
これでは取り付ることができません。

そこで、見口ゴムを外します。そうすると外径が45mmとなるので取り付けることができるようになります。
これでスコープに12 Pro Maxを取り付けることができるのですが、いろいろと不安定!

iPhone本体はケースをつけていても、ガッチリと固定できます。
しかし、接眼レンズホルダーを固定するネジが、12 Pro Maxを支えられるだけの保持力がありません。ノブも回しにくいですし。
アイピースへ取り付けてる最中にもズレてしまうので、ワッシャー(サイズ:M6)を一枚噛ませました。

そして、アイピースに固定するためのリングが回しにくい!
溝でも切ってあれば力が伝わりやすいのでしょうが、ツルツルで幅が狭いので締め込みにくいです。

また、アイピースを固定するツメがプラスチックなのも、しっかり固定できない一因になっています。
通常、ほとんどの接眼レンズの見口はゴムで覆われているから問題ないと思われますが、その見口ゴムを外してしまったので、プラスチックでは滑ってしまい保持力が弱くなってしまいます。

そこで、ホルダーのツメにスポンジを貼ることにしました。


できることなら、加工せずに使いたかったのですが、12 Pro Maxの重量を支えるにはワッシャーとスポンジは必要でした。

このホルダーの仕様上では300gまでのスマートフォンが使えることとなっています。
iPhone 12 Pro Maxは226gなので、まだ余裕があるとはいえ、重たいことに変わりません。
傾斜型のスコープなら、それほど気を使うことはないのかもしれませんが、直視型ではギリギリ許容範囲って感じで、上記のように手を加えても振動に気をつけながら撮影しなければなりません。

雲台を操作するくらいは大丈夫なのですが、三脚にちょっと足が当たったり、三脚を「トン」と置くだけで、水平状態からずり落ちてしまいます。

「ドン」じゃないですよ、「トン」ですよ。ずり落ちないように三脚を置くには、振動を与えないように、そお〜っと置かなければなりません。

そんなことで、このホルダーをスコープに取り付けたまま移動するのは、やめたほうがいいです。
くれぐれも、iPhoneの落下にはご注意を!


あらためてメーカーの使用例の写真を見てみると……なるほど、ぜんぶ縦で取り付けてある。
次回は実際に撮影してみます。

2021年4月11日日曜日

GITZO システマチック GT3533S 〜その2. センターポールはいらない⁈ インプレッション〜



それでは、GITZO システマチック3型3段(標準伸高)を詳しくみていきましょう。


袋が付属しています。
フクロです。ケースでもなければ保護を期待できるよなものではありません。
運搬用というより、保管しておく時に入れておくような袋です。


大型石突はトルクスねじ(レンチ#20)で取り外しができます。
(ちなみに、このネジは3/8インチ)
付属のゴム製石突と交換してみました。
ちなみに石突の重量は、
大型石突 / 71g(71x3=213g)
ゴム石突 / 34g (34x3=102g)
と、ゴムの石突に交換すると、111gの軽量化になりました!
不整地で使うことが多いので、ゴムの石突で使ってみることにします。


伸ばしてみます。

取扱説明書では、2つのロックリングをいっぺんに回せますよ!というように書かれています。
確かに同時に回せて便利なようですが、同時に回したところで、アルミのように脚が自重でスコーンと落ちないので、一段ずつ引き出さなければならず手間はかかります。


Manfrotto 055XBと高さ比べ。


これは嬉しい!フックがあった!


アームなどのアクセサリー接続用として、3/8インチのネジ穴があります。
とはいえ、これといって使い道がないなぁ……
おっ、これはちょうどいい!ブロアーの一時的な置き場所に困ってたんだ♪


トップフラットプレートの取り外し。
レバーを回して緩め、セーフティーボタンを押しながら引き上げる。
別売りのセンターポールや、ハーフボールビデオ雲台、レベリングベースを取り付けられます。


さて、使用感です。
まずは、軽さ。
当初の目的であるザックの軽量化は……う〜ん、それほど変わらないような感じがする……。
ただ、機材を組んだ状態で担いでみると、明らかに軽くなりました!
これは、撮影中の移動が楽になるぞ!

肝心のブレはどうでしょう?
まったく問題ありません。
Manfrotto 055XBと比べても、一段と安定しているように思います。
ジンバル雲台を操作してもブレないし、スコープのピント調節ノブを回してもブレません。
また、iPhoneの画面を軽くタップしてもブレません。ちょっと勢いよくタップするとブレますが、すぐに収束します。
iPhone 12 Pro Maxの望遠カメラを60倍(3900mm相当)で使っても、ブレが気になることはありませんでした。
撮影していて、ブレで困ることは、今のところありません。


そして、前回「私がやってみたいこと(後述)」と書いたのがコレ。
この三脚は、脚の開く角度を3段階に変えられます。
スライディング・ストップを引き上げ脚を開くと、各段で自動的にスライディング・ストップが下がり固定されます。

3段階のうち、いちばん閉じた状態が通常の状態。

2段階目。
無理なく、しゃがんだ状態で撮影できます。

そして、いちばん開いた状態。
本当は伏せて撮影するといいのですが、なんとか、かがみこんで撮影できます。

機材を組んだ状態での開脚角度変更も、脚の収納には気を使いますが、わりと簡単にできます。センターポールがあったら、こうはいきません。
これは、新たな視点をもたらしてくれて、撮影の楽しみが増えました。


**********

使いはじめる前は、軽くて質実剛健、基本的な能力が優れたストイックな三脚だと思っていましたが、実際に使ってみると楽しいこと楽しいこと。
軽くて軽快、それでいて安定、安心感があり、さらにローアングルでの視点と、撮影がさらに楽しくなる三脚でした。

あ、今度はちゃんと製品登録して(できて)、延長保証に入りました。



GITZO システマチック GT3533S 〜その1. GITZOの三脚選び〜



三脚を買い替えました。

これまで、Manfrottoのアルミ三脚055XBを使ってきました。
しかし、これがクソ重たい!
大きめのザックに機材一式を詰め込んで移動するのですが、重いこと重いこと。
常々、このザックを少しでも軽くしたいと考えていたのですが、主な中身であるスコープ、雲台、三脚のうち、軽量化の余地があるのは三脚(055XB)のみ。
ということで、この度、軽いカーボンファイバーの三脚に買い替えることにしました。


GITZOの雲台を使っているからといって、別にGITZOにこだわりも信奉もあるわけではありません。
軽くてブレの収束が早ければ何でもよかったのですが、お店でManfrotto 055のカーボン三脚とGITZOのマウンテニア3型とを持ち比べてみると、スペック上では120gの差でしかないのに、それ以上にGITZOのほうが軽く感じました。
そんな印象があって、GITZOを考えるようになりました。

しかし、GITZOの製品ラインナップを見てみると、細かな仕様の違いで数多くの種類があります。
製品の写真を見ても同じようなものばかり。
この中から、どれを選べばいいんだ?
高い買い物ですし、じっくりと調べてみました。


GITZOの三脚のラインナップは、
・トラベラー
・ミニトラベラー
・マウンテニア
・システマチック
と大別されます。

そして、それぞれにパイプ径、段数の違いなどにより、いくつものバリエーションがあります。
GITZOではパイプ径によって、0型(細い)〜5型(太い)まで「型」が決まっていて、それに段数を合わせて「3型4段」のような表記になっています。
ですから、型番とは別に「シリーズ名+型(パイプ径)+段数」という表記があって、その規則性が分かると選びやすくなりました。


ということで、上位の分類から絞り込んでいきます。
スコープを載せるとなると、マウンテニアかシステマチックとなるでしょう。
耐荷重で見ると、3kg程度のスコープでは、いちばん小さなマウンテニアの0型(8kg)でも余裕があります。
しかし、高倍率のスコープの場合は、耐荷重よりブレの収束が気になるところ。
お店の人に聞いてみると、それは脚のパイプ径次第ということでした。
マウンテニアのパイプ径の最大は3型、対してシステマチックの最小は3型です。
スコープで使うには、この3型でよさそう。

では、マウンテニアかシステマチックか。
マウンテニアは、センターポールがある一般的なイメージの三脚です。

システマチックにはセンターポールはありませんが、別売りのパーツで取り付けることができます。また、レベリングベースを取り付けることもでき、名前の通り、自分の使い方にあった「システム」を組むことができます。
ここは今後の発展性、値段(これが大きい⁈)そして私がやってみたいこと(後述)を考えてシステマチックにすることにします。

次に段数。システマチックの3型には、3段と4段があります。
段数はなるべく少ないほうがいいので3段にします。
収納高は、3段でも055XBと同じ61cm(標準伸高モデル)なのでザックに収納できます。

さらに、システマチック3型には標準伸高モデルとロングモデルがあります。
標準伸高モデルは伸ばした高さが130cmで、ジンバル雲台と組み合わせると身長175cmの私にちょうどいい高さでした。
ロングモデルは152cmとなり、脚を伸ばしきると私には高すぎます。
デジスコでは、昔からよく「三脚の脚をぜんぶ伸ばすな」と言われてるようですが、機材を組むときに、いちいち高さを調整するのは面倒です。
参考までに、Manfrotto 055は140cm、Manfrotto 190は135cmです。(それぞれセンターポールを伸ばさない状態で)

ということで、買うべきモデルが導き出されました。
システマチックの3型3段、標準伸高モデルとなりました。
型番でいうと『GITZO GT3533S』です。


次回は、この「システマチック3型3段」を詳しくみていきます。

2021年1月24日日曜日

iPhone 12 Pro Maxでスマスコ 〜5. QuickTake〜


「QuickTake」というのは、iPhone 11シリーズで導入されたシャッター動作の名称です。

シャッターボタンをタップして写真撮影は従来通りですが、タップしてホールドでビデオ撮影に、タップして左(横位置の場合は下)にスライドさせるとバーストモードになり、写真撮影中でも、すばやくビデオが撮影できるというのが特徴です。

iPhone 11以降のユーザは、日常的に写真を撮るとき使っているはずなのですが、「QuickTake」という名称は、ほとんど浸透していないように思えます。

QuickTakeができる機種は、iPhone 11シリーズ、SE(第2世代)、12シリーズと、iOS 14にアップデートしたiPhone XS / XS Max、XRです。(執筆時現在)

私はiPhone 11の購入を見送ったので、このQuickTakeを使い始めたのは昨秋(2020年)からだったのですが、『iPhone 11 Proをスマスコで使うための考察』を書いた当時、これからのiPhoneはすべてQuickTakeになって、レリーズ操作でバーストモードが使えなくなる……すなわち、スマスコでは標準カメラアプリが使えなくなってしまうのかと途方にくれました。

しかし、そんな不安も一転して、今では逆に、このQuickTakeがスマスコの新たな楽しみ方を広げてくれています。


それでは、QuickTakeの動作を見てみましょう。
QuickTakeには、単写、バーストモード、ビデオと、3つの“撮影モード”があります。

●単写

「単写」、すなわち、1回タップして撮影する写真です。
これは、これまでと変わりません。
設定でフォーマットを「高効率」に設定していればHEIFで撮影されるし、スマートHDRをオンにしていればスマートHDRで撮影されます。

●バーストモード

シャッターボタンをタップして、縦に構えているときは指を左に、横に構えているときは下にずらすと連写がはじまります。
タップして指をずらすのを躊躇しているとビデオ撮影に移行してしまうので注意。

写真撮影のモードを「単写」と「バーストモード」と、わざわざ2つに分けたのには理由があります。
iPhone 12シリーズにおいては、単写で撮れる写真とバーストモードで撮れる写真は別ものなのです。

単写では、Deep FusionやスマートHDR 3が機能した写真が撮れますが、バーストモードでは、それらが機能しない、ただのJPEGの写真になります。
設定で高効率を選択していてもHEIF(.HEIC)にはならずJPEGになります。

Deep FusionやスマートHDR 3が苦手な、すばやく動きまわる被写体や大きな動きの被写体ではバーストモードが活躍します。

●ビデオ


動画の基本サイズは、1920 x 1440pixで4:3の画面比です。
写真のアスペクト比を変えると、ビデオもそれに準じて16:9になったりスクエアになったりしますが、それらは1920 x 1440pixをトリミング処理されて保存されます。

ですから、アスペクト比を変えると、元の4:3の動画ファイルと、トリミングされた動画ファイル、それに編集履歴を記録したファイル(.AAE)の3つのファイルが生成されます。
特に動画ファイルが2つ保存されることになるので、ストレージ容量が気になる場合は注意が必要です。
(XSシリーズでは選択したアスペクト比が、直接、動画ファイルに適用されるので、1つの動画ファイルしか生成されません)

フレームレートは30fpsです。(ビデオ撮影の設定で「自動低照度FPS」をオンにしていると、暗い環境下では24fpsになります)

ビデオの設定で4Kにしていようが60fpsにしていようが関係なく、上記のサイズとフレームレートになります。
それでもフルHDなので、SNSに投稿する分には十分ではないでしょうか。
むしろ、TwitterなどHDR Dolby Visionに対応していないサービスでは、QuickTakeで撮ったビデオのほうがちょうどいいです。

このQuickTakeの動画撮影において、個人的にうれしいポイントは、ビデオ撮影に移行しても写真撮影で設定したデジタルズームの倍率が変わらない!という点です。

タップ&ホールドでビデオ撮影が開始されると少し画像が拡大されますが、ほぼ現在の倍率のまま撮影されます。
ビデオ撮影が終わっても、現在の倍率が維持されます。通常の撮影モード切り替えのようにデジタルズームが1.0倍に戻されるようなことはありません。
ですから、ためらうことなくビデオ撮影ができるのです。


と、書いてきましたが、高倍率なスマスコ撮影において、レリーズは必須です。
ところが、イヤフォンのコントローラのボリュームボタンや100円ショップのリモートシャッターでは、単写ができるだけでバーストモードもビデオ撮影もできません。


では、ダイソーにも売っているBluetoothリモートシャッターはどうでしょう。
・設定で「音量を上げるボタンをバーストモードに使用」をオンにすると、ボタンの長押しでバーストモードがはじまります。
・オフにすると、ボタンの長押しでビデオ撮影になります。
・ボタンが2つありますが、どちらも同じ動作をします。

3つのモードを同時に使えない上、バーストモードの動作開始がボタンを長押ししてから1秒ほどかかるので、どこまで実用性があるのやら。
単写とビデオだけなら使えるのではないでしょうか。


iPhone本体の「+」側ボリュームボタンでバーストモードができるように設定できるので、私が3Dプリントで作ったボリュームボタンをケーブルレリーズで押すパーツを使えば、単写とバーストモードはできるようになります。しかし、ビデオ撮影をするには、マイナスボタン側も押さなければならず、こちらも3つのモードすべてを同時に使うことはできません。


そこで新たに、このようなものを作りました。

QuickTakeレリーズ

ケーブルレリーズの押し具合だけで、単写、バーストモード、ビデオを撮り分けることができます。(動画はXS Maxで使用)