2024年10月20日日曜日

3Dプリントの照準器取付けマウントを公開

 『照準器取付けマウントを作り直す』で、スコープに照準器を取り付けるためのマウントを3Dプリントで作り直したことを書きました。

これを製作している最中は、DMM.makeのクリエイターズマーケットに公開して誰でも使ってもらえるようにしようと考えていたのですが、完成してから重大なことに気がついたので取りやめました。

それは、照準器が載っているプレートについてです。

このプレートは、いちばんはじめに使っていた照準器『デジスコドットコムDOS-CS1』に付いていたプレートです。

これを基準につくってしまったため、汎用性がない、すなわち、デジスコドットコムの照準器を持っていないと使えないことに気がついて、クリエイターズマーケットへの公開を取りやめたのでした。(だから『照準器取付けマウントを作り直す』の最後では逃げているのです)

しかし、照準器関連のエントリーには、ちょくちょくアクセスをいただいておりまして、わざわざ当ブログを見にきてくれたにも関わらず「手に入らないんなら意味がねーじゃねーかっ!」では申し訳ないと思っていたのです。ずっと。

そんなことで、やっと汎用性のあるマウントをつくることにしました。
汎用性、すなわち、様々な照準器を取り付けられるようにしようということですが、まず考えたのがオリンパス EE-1を使えるようにすることです。
この照準器は、すでに生産終了となっていますが、現在でも使用しているユーザーが多いのではないでしょうか?

オリンパス EE-1はアクセサリーシューでの取り付けです。
他にも、カメラ用の照準器はアクセサリーシューに取り付けるようになっているものが多くあります。
ということで、アクセサリーシュー用のマウントをつくりました。

その他、というより、こちらのほうが種類が豊富なのですが、トイガン(銃器)用のドットサイトを取り付けられるように20mmピカティニーレールのマウントをつくりました。
撮影用として販売されている照準器もエアガン用照準器のOEM品がほとんどです。


照準器取付けマウントを作り直す』では、この照準器マウント用にアクセサリーパーツをつくっておりますが、アジャスターは煩雑になるだけなので公開するのをやめました。
アクセサリープレートは公開しました。

●パーツ構成

以下の3つのパーツからなります。リンク先(DMM.makeのクリエイターズマーケット)より入手できます。

3つのパーツを別々に注文しなくてはなりませんが、3つのパーツをまとめて1セットにすると、3Dプリントサービスの黒色での造形可能サイズを超えてしまうため、それぞれ分割することにしました。

対応するスコープは、Kowa TSN-774, TSN-884,、PROMINAR 99S, 88S, 66S です。

●使用するネジ・材料

・六角穴付ボルトM3 x 6mm:2個
・M3ナット:3個
・六角穴付ボルトM6 x 12mm:1個
・六角穴付ボルトM6 x 14mm:2個
・六角穴付ボルトM6 x 35mm:1個
・M6ナット:4個

M6 x 35mm以外はホームセンターで手に入ると思います。使用上はユニクロでもステンレスでも問題ありません。
ネット販売は八幡ねじのオンラインショップからどうぞ。
六角ナット 鉄 黒染(3と6を選択してください)

・1mm厚のゴム(粘着付きのものがいいでしょう)

ゴムは以下の画像を拡大縮小なしで印刷すると型紙として使えます。(クリック・タップで拡大表示)

アクセサリープレートのゴムも1mm厚の粘着付きを使用します。

●組み立て

組み立てる前にスコープからアクセサリーリングを外しておきます。

①M3ナットをマウント本体のアクセサリーマウント部の内側から取り付けます(接着推奨)。(※ナットの向きに注意!)
②ゴムを貼り付けます。

③マウント本体をスコープのアクセサリーリングに取り付け、④M3 x 6mmのボルトで仮止めしておきます。(※ナットの向きに注意!)

⑤マウント本体が垂直になるように調整します。
⑥調整できたらM3 x 6mmのボルトを締め込み、しっかりと固定します。

⑦マウント本体にM6ナットを取り付けます。(※ナットの向きに注意!)

⑧マウントベースをM6 x 35mmとM6 x 12mmのボルトで取り付け、仮止めします。

⑨アクセサリーシューマウントまたはピカティニーレールマウントをM6 x 14mmのボルトで取り付け仮止めします。(※ナットの向きに注意!)(M6 x 14mmのボルトがなければM6 x 12mmでも構いません)

⑩照準器を取り付け、レティクル(ドット)の調整をするのですが、オリンパス EE-1の場合はマウントベースをパン・チルト方向ともにまっすぐ(垂直水平)に固定して、EE-1側の照準器調整ダイヤルで合わせることができます。
その他の照準器はパン・チルト方向を調整して、それぞれのボルトを締め込み固定します。
ボルトを一気に締め込むとドットがズレやすくなります。回転軸、調整方向のボルトを交互に徐々に徐々に締め込んでいってください。
また、ボルトを締め込んでいくと、その分ドットもわずかに動くので、その動く分を見込んで調整してください。


※EE-1を取り付けると、ターゲット明るさ調整ダイヤルに届かなくなると思うので、電源はポップアップの開閉で行ってください。

2024年9月9日月曜日

五藤テレスコープ GT-M518 単眼鏡

五藤テレスコープ(五藤工学研究所)。
天文の分野では名の通った会社のようですが、すみません、ワタクシ存じ上げておりませんでした。

普段、Amazonからのおすすめ商品メールは、ほぼ目を通すことなく削除するのですが、この時は長方形の鏡筒をした単眼鏡が目に止まりました。
何これ?ヘンなの。どうせ安物の中華製でしょ、と値段を見ると3万円とかするじゃないですか!
これはただものではないとメールのリンクを開き、おまけに購入にまで至りと、まんまとAmazonの思惑に乗せられてしまったのでした。

Amazonのレビューを見ると、Nikonの単眼鏡やVixenアルテスと比較しても甲乙つけ難いようで、どうやらモノは間違いないようです。
加えて、メーカーの説明にある、この図が購入の決め手となりました。

歪曲収差、周辺の歪みが少ないとのことです。
アルテスは、この歪みがまあまああるので、アルテスと並ぶほどの画像で、しかも歪みが少ないとなると3万円でも買って損はないと思いました。
ちなみに販売は、一部の専門店とAmazonだけのようです。
(入手はこちらからどうぞ)

付属品は、巾着袋とストラップ。
これだけです。これだけで十分なんですけど……レンズキャップがない!

ということで、対物レンズ側はグロメットで代用することにしました。


このGT-M518とVixen アルテス、外見はまったく違いますが、実は異母兄弟なんじゃないかというくらい似ています。

工学性能はGT-M518が5倍でアルテスは6倍という倍率の差からくる仕様の違いはありますが、実際の描写は両者とも本当に同じように見えます。
全長、重さもミリ単位の違いしかありませんし、決定的なのが見口からストラップ部、フォーカスリングにかけて、ほぼ一緒、加えてアイレリーフも非常に近い数値なので、これすなわち、アルテスのホルダーがそのまま使えるということです!(フロントサイトは使えませんが)
ホルダーをつくる手間が省けて大助かりです。

労せずしてiPhoneに取り付けられたので撮影してみたのですが、前述のように、アルテストほとんど一緒のような印象で、倍率が5倍か6倍かの違いだけです。
両者ともケラレをなくすためにiPhone 14 Proで2x以上にしなくてはなりません。

期待していた歪曲収差も、結局はアルテスと同じようなものでした。


もっとも、上の写真はiPhone 14 Proにより歪みが倍増されているので、眼で見る観察(鑑賞)では、それほど気になるものではありません。

iPhone 4Sで撮影。14 Proより歪みが少ない。

フィルターアタッチメントもつくりました。
入手はこちら。(3Dプリント)

フロントサイトも付けましたが、いかんせん、四角い鏡筒では使える角度が限られてしまいます。
まあ、この照準は初期の導入を補助するものなので、これでも役には立ちます。


素晴らしい単眼鏡なのですが、個人的には同じような単眼鏡が2つになったわけで、使い分けに迷います。
というか、使い分けできるのか?結局、無駄な買い物だったのか?とも思ったのですが、異母兄弟のようなこの両者、決定的に違う箇所があります。

それはフォーカスリングです。
アルテスは最短から最遠までフォーカスリング(鏡筒)を3回転半させなければなりませんが、GT-M518は1回転もいりません。
これは、遠くから近くを見る時に素早くピントを合わせられますし、動きが早い対象にもピントを合わせやすいというメリットがあります。
かといって、ピントのピークが合わせにくいということもありません。


また、倍率の5倍と6倍という数字は思ったより大きく、この先、使い分けのポイントになりそうです。

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歪曲収差は期待したほどではありませんでしたが、描写や操作性は素晴らしいです。
間違いなく、最高クラスの単眼鏡と言っていいでしょう。
五藤工学研究所、もっと個人向け製品を製作してほしいものです。






2024年6月13日木曜日

天体望遠鏡用アイピースをスマスコで使う 2. 撮影


 ひとめ見て気になったこと……

それは歪みです。
歪み(歪曲収差)がひどいのです。

どれだけ歪んでいるか、近くの公園に歪みを見るのにちょうどいいオブジェがあったので、比較、確認してみました。


まずはVixen SSW14mmから。

強烈に歪みます。


次にNikon NAV-7SW。

それほど歪みはありません。

この歪みは中心から端にいくほど、また、視野が広くなるほど、倍率が低いほど大きくなります。
Nikon NAV-7SWは、Vixen SSW14mmより見掛け視界が狭いですし、倍率も高いので、その分歪みが抑えられています。
対してVixen SSW14mmはその逆で、視野が広く倍率も低いと、歪みの悪条件が揃っています。

まてよ、倍率が低い=広角ほど歪むということは、iPhoneのカメラの歪みも加味されているのか?
iPhonのカメラはどんどん広角化が進み、14 Proではついに24 mm(35mm版換算)になってしまいました。
もはや、日常的な撮影でも使いにくいほどの広角です。

(※以下、iPhoneの焦点距離に関しては35mm版換算の数値で記載します)

そこで、中古(しかもジャンク扱い)のiPhone 4Sを買ってきて比較してみることにしました。

iPhone 4Sのカメラは35mmです。

35mmといえど、歪みが出ます。
ですが、14 Pro Maxの24mmと比較すると、幾分かマシです。


このように、広視野アイピースでのスマスコは、アイピース自体の歪みに加えてiPhoneのカメラの歪みで、いっそう歪みがキツくなります。

とはいえ、撮影の対象が生物なら、それほど気になることは多くないと思います。
各アイピースで鳥を撮影してみました。

●Vixen SSW14mm
歪みがひどかったSSWですが、描写は鮮やかでキレがあります。これは意外に気に入りました。

ズームは14 Pro Maxの場合1.1xほどでケラレが消えますが、やはり周辺部の歪みが気になって1.2xにして撮っていました。


● Nikon NAV-7SW
う〜ん、もっさりしています。
暗めで色もくすんでいて、輪郭もパッとしません。60倍クラスのアイピースらしい印象です。

対物レンズ有効径65mmのこのスコープでは60倍は厳しいようです。80mmクラスのスコープなら、また違うかもしれません。


お店で他にも天体望遠鏡用広視野アイピースを試させてもらいましたが、やはり歪みがありました。
視野が広ければ広いほど、また倍率が低いほど周辺部の歪みが大きくなるのは仕方がないとのことです。
それに比べると、PROMINAR(コーワ)のTE-80XW(https://amzn.to/3RpoGm8)は、よく歪みを抑えられていると思います。

天体望遠鏡と地上望遠鏡(フィールドスコープ)では、アイピースに求められる役割が違うという話は、お店の人やコーワの人からも聞きました。


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こうして広視野アイピースを試してみて、iPhoneの48MPでの焦点距離が35mm程度にならない限り、アイピースは極端な広視野よりも、TE-11WZⅡくらいの視野でiPhoneを少しズームして使うのがいちばんバランスがいいのでは?と考えるようになりました。
iPhoneの48MPというのは“解像度の余裕”と捉えて。

では、この先iPhoneのカメラが48MPで焦点距離35mmとかになる可能性はあるのでしょうか?
イメージセンサーが大きくなることはあっても小さくなることはないでしょう。一方で筐体の厚みも薄くなることはあっても極端に厚くなることはないでしょう。カメラ部分の盛り上がりでごまかすにも限界があります。
もしかしたら、テトラプリズムで技術的に可能になるかもしれませんが、ユーザーが28mm以下の広角に慣れていることもあり、35mmに上げるのは受け入れられない気がします。
そんなことから、これからもiPhoneのメインカメラは24〜26mm、せいぜい28mmあたりを維持することになると考えています。


最後に、今回使用したスコープ、PENTAX PF-65EDⅡについてですが、驚くようなキレイさはないですが、けっして悪くもない、平均的な65mmのEDレンズといった印象です。
ですが、専用のアイピースを使っていないこともあり、本当の実力は判断しかねます。